
「バッハの学校」を主宰して多くの音楽家を育ててきた丸山桂介さんが、2月に亡くなった。知らせてくれたのは丸山さんを恩師と仰ぐ知人のピアニストで、ミニコンサートのトークの中。
丸山さんはバッハ研究者として卓越した業績を残した音楽学者だ。1943年、東京都の生まれで、日本大学芸術学部を卒業した後、ドイツのハンブルク、シュトゥットガルト、ライプチヒで、バッハとベートーヴェンを研究。
東京音楽大学で長年講師を務めた。2016年から18年まで、同大学付属図書館で「バッハの神学文庫連続講座 マタイ受難曲」を全9回開催。気流子が愛読したのは著書『神こそわが王 精神史としてのバッハ』(春秋社)だった。
すごい研究者が日本から輩出したものだと、ページをめくるごとに驚嘆しつつ読んだ。丸山さんがバッハ研究を始めたのは「バッハの音楽に宿る何か聖なるものが私を衝いた」からだった。
バッハにとってキリストは神の子であり、バッハも神の前にあったが、その神が「誰であったかは見通せないのである」と丸山さんは語る。そこでバッハを、音楽というロゴスを用いて思索した神学者として探求した。
プレリュードとフーガから構成される「平均律」という曲集がある。これは誤訳だという。原語の直訳は「よく整えられたクラヴィーア」。よく整えられたとはキリストによって治められた宇宙の秩序のこと。バッハは西洋精神史の頂点に立つ結実なのだ。







