「あふむけば口いつぱいにはる日かな」(夏目成美〈せいび〉)。三寒四温という言葉がふさわしいような寒い日々と暖かい日々の繰り返しがここのところ続いている。東京で桜が開花したのは昨日で、例年に比べるとだいぶ遅れた。春といいながらその実感に乏しいのも、日ごとの気温の変化が大きいからだろう。
空模様も一定していない。折り畳み傘を用意しないと急な雨に遭って困ることもある。もっとも、異常気象は日本だけではない。自然の動向はなかなか予測できないところがある。
昨日でNHK連続テレビ小説「ブギウギ」が最終回を迎えた。戦前戦後に活躍した歌手の笠置(かさぎ)シヅ子さんをモデルにしたドラマで、女優の趣里さんが主演を務めた。笠置さんは「ブギの女王」と言われるほど一世を風靡(ふうび)した「東京ブギウギ」などのヒット曲がある。
気流子が笠置さんを知ったのは、テレビ番組などで審査員を務めていた時代。そのころは歌手時代のことを知らなかったので、辛口のご意見番のおばさんというイメージだったのをかすかに覚えている。歯に衣(きぬ)着せぬ声に妙に迫力を感じたものだった。
「東京ブギウギ」は今聞いても、リズム感があって新しさを感じさせる。戦後の荒廃の中にいた日本国民を勇気づけたテンポのいい歌声は、今の日本にこそむしろ必要なのかもしれない。
笠置さんが亡くなったのは1985年のきょう。今年の命日は、奇(く)しくも「ブギウギ」最終回の翌日となった。