
ハノイ市ノイバイ国際空港のターミナルに今春、水牛が迷い込んだ。
いかにも急速に近代化を遂げているベトナムらしい新旧交差の珍事で、現地紙もこれを報じた。空港警備員は直ちに珍客到来への緊急対応を要請され、お帰りいただいたという。
さすがに相手が水牛では、歓迎の花束を差し向けても、ただむしゃくしゃと食べ尽くされるだけで、さらに「もー1束おかわり」と言われたかもしれない。
ベトナムを歩くと、太平洋から上り始めた朝日に水田の草をはむ水牛がシルエットとなった美しい光景に何度も出くわす。水牛の角は固くて尖(とが)ってもいるが性格はおとなしく、守るべき子供がいない限り、突然、突進してくるようなこともない。中国の農村では結構、豚が飼われているが、穏やかな水牛はベトナムにぴったりくる家畜だ。
高層ビルが目立つハノイ市内から車で1時間程度の郊外にあるノイバイ空港の周辺も当初、田園地帯に造られた経緯から、今でもさまざまな家畜が放牧され、今回は群れからはぐれた水牛が迷い込んだものらしい。
ノイバイ国際空港は他の空港同様、防犯や動物駆除のため周囲をフェンスで囲ってあるものの、今回の珍事が発生したターミナルへの道路にはフェンスがなく、バイク侵入の禁止標識があっただけだった。
また空港周辺には森もあるため、ハイウエーから猿を見掛けることもあるが、さすがにこれまで空港ターミナルまで「お散歩」に来た猿はいないそうだ。(T)