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【羅針盤】平和を損なう武器抜き支援

日本政府は、ロシアの侵略を受けるウクライナへの支援として、防弾チョッキや防護服、高機動車など非殺傷防衛装備品を提供している。殺傷能力のある武器の提供はしていない。防衛装備移転三原則の運用指針などで認められていないからである。

昨年12月、その運用指針を改定した。他国のライセンスで国内生産する武器を、ライセンスもとの国以外の第三国にも輸出できるようにした。しかし、現に戦闘中の国は対象外とした。

このため現によこしまな侵略を受け喫緊に自衛のための武器を必要としているウクライナに、戦況打開に即効性のある武器の提供ができていない。実際に前線で戦う兵士の最優先のニーズに応えていない。このためせっかく運用指針を改定した意味を損なっている。

全力支援と言いつつ支援の手を抜いている。人として、国家として不誠実の極みである。

戦闘中の国を武器供与の対象外としたのは、戦闘に直接加担しないためであると思われる。しかし、現に明らかな侵略を受けている国がある。これを助けないのは、いかに言い訳をしようと、実際には侵略者に加担している。助けるふりをして、足を引っ張っている。

この現状では、将来わが国がいずれかの国の侵略を受けた時に、友邦国・同志国の支援を期待することはできない。他国が侵されている時に侵略者に実質的に加担しておいて、自国が侵された時には助けてくれと言う。そのような手前勝手な国に、真面目に応えてくれる国がないのは当たり前の話である。

今のウクライナに対する中途半端な支援は、確実に未来の日本の平和を損なっている。

日本を取り巻く安全保障環境は極めて厳しい。ウクライナに侵略しつつ北方領土の占拠を永続化せんとするロシア、日本全土を核ミサイルの射程に収め周辺国を恫喝(どうかつ)する北朝鮮、台湾併呑(へいどん)を狙いつつ尖閣列島の実効支配に向けた動きを着々と進める中国という強権独裁諸国家に直接対峙(たいじ)している国際環境と、実効的な防衛力整備は遅々として進まず政争のみ繰り返す国内事情は、鋭い対比を見せている。

そろそろ独り善がりな平和主義から現実的で積極的な平和主義に脱皮し、世界の平和に取り組むべき時期である。空想的平和を夢見る一国平和主義の時は過ぎた。目を覚ます時は今しかない。憲法を改正し、自衛隊を自衛軍として公に認知し、専守防衛という自滅的綺麗(きれい)ごとに決別する。時間の余裕は一刻もない。(遊楽人)

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