米国では今月5日、「スーパーチューズデー」と呼ばれ、今秋の次期大統領選に出馬する民主、共和両党の候補者指名に向けた予備選や党員集会が16州・準州(米領サモア)で行われた。
バイデン、トランプ両氏はそれぞれ14勝1敗と圧勝を収め、結果として大統領選は現職バイデン氏対前職トランプ氏による2020年の再現となることが現実味を増した。
バイデン氏はすでに81歳であり、会見では言い間違えも多く、記憶力の問題が指摘される。民主党員自らバイデン氏支持に積極的でない中、不幸にも他に有力な候補がいない状況だ。
現政権が招いた物価高、税金の使途(米国民自体への投入が足りない)、移民の急増と治安の悪化が不評で、支持率も上がらない。それらの政策課題については前政権の方がよかったとの米国民の印象から、トランプ氏再選の呼び声が高まりつつある。
トランプ氏には3月4日、決定的な追い風も吹いた。
2020年の「連邦議会乱入事件」にトランプ氏が関与したとし、「国への反乱に関与した公務員が国、州の公職に就くことを禁ずる」との憲法条項に従い、コロラド州の最高裁が昨年12月、同州予備選にトランプ氏は立候補できないとの判断を下していた。
これを不服としたトランプ氏の上訴に対して連邦最高裁は同日、9人の判事が全員一致でその憲法条項の「行使権限が州にはない」とし、州の判決を覆してトランプ氏の立候補を認める判断を下したのだ。
いまだに巷で飛び交う「もしトラ」などという次元を超え、トランプ政権誕生の可能性は決して否定できないレベルとなっている。
しかし、日本の岸田文雄首相はバイデン氏招聘により4月に国賓訪米する一方で、トランプ陣営とのパイプ作りにはようやく本腰を入れようか、との段階だ。際立つアンバランスに日本の国益を守れるのか、との疑念は尽きず、外交の岸田の矜持も感じられない。
昨秋導入されたインボイス制度により個人事業主らは金銭管理を厳格にしなくてはならなくなった。今、この制度を採用して初の確定申告の期間中であるが、国会では衆院政治倫理審査会(政倫審)が開催された。
だが、岸田首相が出席を急遽表明して公開審議になったものの、議員らの政治資金不記載問題の解決に向けた意思も展望も全く示されなかった。3千万円不記載の刑事訴追を地検特捜部から受けた自身の派閥への責任感は全く感じられない。
挙句の果てには鈴木財務相が衆院予算委で、不記載の政治資金のうち、政治活動に使わなかった残額を個人の所得として納税を行うか否かは、議員が判断すべきだ、とする発言を行うに至った。国民の納税義務を謳った憲法にも抵触するような発言であり、多くの国民が置かれた納税事情とは極端にアンバランスであった。
外交、内政いずれをとってもアンバランスな岸田政権に国民の不満は高まっている。政権支持率低迷はこれを裏書きしている。(駿馬)