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40年前、NHKは「21世紀は警告する」と題する特集を1年間にわたって放送した。20世紀を地球的規模で分析し、来世紀の課題を引き出そうというドキュメント番組である。1回目のタイトルは「祖国喪失」(1984年4月放映)。
その一場面が忘れられない。国を失い米国に移民した人々の市民権を得る宣誓式だ。「国内外の敵からアメリカ合衆国を守ることを誓います」「国家の大事の際、法律が定めた市民としての義務を果たします」。教育勅語の「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ」を思わせる堂々たる宣誓だった。
米国では大統領が就任式で聖書に手を置いて行う宣誓は知られているが、憲法第6章は上下両院議員、各州議会議員のみならず、全ての行政官、司法官らに宣誓義務を課す。憲法学者によれば、国会議員に「就任宣誓義務」を課す国は約50カ国に上る。
わが国の憲法には宣誓義務がない。それで自主憲法制定国民会議がこんな宣誓を提案したことがある。「何人からも職務に関して贈与を受けずまた不正な約束もせず、つねに全力を尽くし、日本国の発展と国民の利福の増進に努めることを誓います」。
政治倫理を問う前に国家への忠誠を問うべきではないのか。政治家から「国内外の敵から日本国を守ることを誓います」といった声はとんと聞かない▼昨今の不甲斐(ふがい)ない国会議員を見て「祖国喪失」が脳裏をよぎった。今日のウクライナは明日の日本。誰が否定できようか。