
韓国の出生率低下が止まらない。2023年の合計特殊出生率は0・72。経済協力開発機構(OECD)加盟国の中で、出生率が1を下回るのは韓国のみ。同じく出生率低下に悩む日本でも1・26(22年)だ。「韓国消滅」も決して絵空事ではない。
一般に経済発展を成し遂げた国ほど、出生率が低下する傾向はある。しかし、韓国には特有の事情があるようだ。住宅価格の高騰に加え、教育費の負担の大きさが若いカップルに子供をつくることをためらわせている。
教育費の負担に関しては日本も同じだ。しかし韓国の場合は、それが極端だ。よく伝えられる過度な競争社会の過酷さは、儒教や科挙の伝統から来るものと思われる。
文官を重んじ、武官(軍人)を低く見、職人などはさらに低く見る儒教的な伝統は、今も形を変えて残っている。出世競争で常にトップに立つことを目指す。「ナンバーワンにならなくてもいい/もともと特別なオンリーワン」という「世界に一つだけの花」のような発想は流行(はや)らないのである。
少子化対策では韓国政府も、5年ごとに「低出産高齢社会基本計画」を定め、06年以降、約31兆6000億円相当を投入してきた。漢陽大の田英洙教授は「出産の意図がある人を対象としている」ことに、そもそも限界があると指摘している。
日本政府の「異次元の少子化対策」も、児童手当の拡充など似たような対策である。韓国の失敗を参考に、早く計画を練り直すべきだろう。