【上昇気流】(2024年3月4日)

車専用道路「のと里山海道」の穴水町の崩落現場(藤橋進撮影)

現実の街並みをデジタル空間に再現し、地震発生から5分以内に想定される津波被害を算出して住民避難に役立てる――産官学でこうした技術開発が進んでいる。複数のデータを組み合わせ、被害の大きさや範囲などの予測を視覚的に示せる利点がある。

防災対策は日ごろの備えが中心だが、能登半島地震では住民一人ひとりの対応はさまざまで戸惑う様子も多く見られた。大規模災害では想定外の要素もあり得よう。その時の対処如何(いかん)で減災の余地はかなりありそうだ。

報道によると、地震の発生時によそにいて被災地の自宅やその近くにいた家族らに連絡した人が少なくない。

その時、とにかく避難せよと言って避難場所も一方的に指示した人や、自宅内の状況を聞いて家族らに判断を任せたり、互いの意見がまとまらず、時間が過ぎていったりした例もあった。事後に「もっと強く言っておけばよかった」と後悔を口にする人もいる。

互いに連絡を取り合えるのは、もちろん携帯電話やパソコンなど通信手段が発達し、個人、家庭レベルで日常的に利用できるようになったことが背景にある。今回、開発されるデジタル技術による津波情報の提供は、家族、近親者らとのやりとりの際、意思疎通の穴を埋めることに狙いがある。

これは予知ではなく、刻々と現実となってくる自然現象を広く知らせるものだ。危急時のとっさの判断は自らやらなければならないので、そのための情報は大きな力になるはず。

spot_img
Google Translate »