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岩手県奥州市の黒石寺に1000年以上続く「黒石寺蘇民祭」が今年で幕を閉じたことは、メディアでも大きく報じられた。厳寒の真夜中、裸の男たちが「蘇民袋」を奪い合い、五穀豊穣、無病息災を祈る祭りだ。
たくさんの男たちがいるのにどうして、とも思う。終了を決定した藤波大吾住職がNHKに語ったところでは、裸祭りの前にさまざまな宗教行事があり、それを担う10軒の檀家(だんか)が高齢化するとともにその半数に跡取りがいないのだという。
地震のあった能登半島も祭りの盛んな所である。現地で「奉燈」と呼ぶキリコ祭りが各地にあり、能登町の「あばれまつり」は蘇民祭と同じく裸の男たちが主役だ。能登は都会へ出た若い者も、祭りの時は帰って来るという土地柄である。ここでも高齢化、過疎化が進み、地震が追い打ちを掛けた。
穴水町から海沿いに25分ほど車を走らせた集落の知人を地震見舞いに訪ねた。住居は無事で津波も1㍍ほど観測されたが、家にまでは来なかった。しかし、まだ断水が続いている。
断水以上に知人が心配するのは集落の将来だ。50戸ほどの小さな集落で、ほとんどが高齢者。比較的若い部類の50代から60代の男性も妻帯者は極めて少ない。そのため、この集落でも代々続いてきた祭りができなくなっているのだという。
蘇民祭の終了は、高齢化と婚姻数の減少という日本の抱える課題の表れである。能登の祭りがどうなるか、復興の指標として注目していきたい。