
日本人は世界一のカニ好きと言われている。タラバガニ、毛ガニなどあるが、冬の味覚の王者がズワイガニだ。その旨味は世界最強と絶賛する人もいるほど。だが、俳句歳時記でカニは夏の季語。
イソガニやサワガニを指していて、ズワイガニは入っていない。私たちがこの味に親しむようになったのは古くはないのだ。広尾克子さんの『カニという道楽』(西日本出版社)によると、1960年代半ば以降。
冷凍物流が整備されていなかった時代、水揚げされる地で食される以外は、畑の肥料として使われたそうだ。が、62年、大阪・道頓堀に「かに道楽」を創業した今津芳雄が冷凍物流の方法を確立し、大都市圏でカニ料理が大人気に。
ズワイガニは水温が3度以下で、水深数十㍍から数百㍍の砂泥域に生息している。日本海の山陰・北陸沖合が主要な漁場なのだ。漁港の名前を冠したブランドガニで、越前、松葉、柴山などがある。
石川県のものは「加能ガニ」で、ふるさと納税の返礼品でもある。能登半島地震の影響で出荷がストップしていたが、今月再開(小紙2月22日付)。県漁業協同組合の関係者は廃棄処分を覚悟していたそうだが、「おいしい状態で届けることができてうれしい」と語る。
加能ガニは県内の港で水揚げされた、甲羅の幅9㌢以上の雄ズワイガニで、11月から3月にかけてが旬。身がぎっしり詰まり、歯ごたえと香り、強い甘みが特長だ。徹底した管理で味が保証されている。