【上昇気流】(2024年2月28日)

25日、キーウ(キエフ)で記者会見するウクライナのゼレンスキー大統領(EPA時事)

ロシアのウクライナ侵略戦争が始まって丸2年が経(た)った。軍事侵攻はなぜ2月だったのか。「冬は戦車戦に最適だから」と言う人もいれば、「ウクライナの親ロシア政権が崩壊した『マイダン革命』(2014年2月)の復讐(ふくしゅう)だから」と言う人もいる。

では、戦争に適した季節はあるのだろうか。戦争の主力が軍馬だった時代には、まぐさ(馬の餌になる草)がある季節でないと軍の移動が困難だった。フランク王国は軍事行動を起こすのを軍馬の行動しやすい5月と決めていた。戦争には季節的偏重があったのである。

それで戦争の9割は4月から11月の期間に起こった。米国の独立戦争や南北戦争は4月。ナポレオンが60万の軍隊を動員してロシア遠征を始めたのは1812年の薔薇(バラ)香る6月。もっとも欧州に稀(まれ)な早い冬将軍が到来し、フランスに戻れたのは僅(わず)か5000人。同年に勃発した米英戦争も6月だった(猪口邦子著『現代政治学叢書17巻 戦争と平和』東京大学出版会)。

折しも三寒四温の季節である。この後に本格的な春が来る。ひと昔前であれば戦争の季節だが、今はまぐさに左右されない。戦争は季節を選ばなくなったのである。武器さえあれば、独裁者の心ひとつか。

ドイツ系ユダヤ人の米政治学者ハンナ・アーレントは20世紀を「戦争と革命の世紀」と名付けた。21世紀もまた「戦争の世紀」なのか。

そうさせないために何をすべきか。戦後日本はコペルニクス的転換を迫られている。

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