能登半島地震から、もうすぐ2カ月を迎える。水道や道路などインフラの復旧が進まず、被災者の生活再建や事業再開にはまだ遠い道のりがある。
こうした大きな災害が起こるたびに、自然災害大国に生きる怖さを痛感する。
国土学者の大石久和氏が著書『国土が日本人の謎を解く』の中で、日本は複雑で長い海岸線を持つ細長い弧状列島で標高の高い脊梁(せきりょう)山脈が縦貫するなど、10項目の厳しい自然条件を挙げている。
加えて、日本は軟弱な地盤上に大きな都市があり、大地震が多い。「トンデモ級の悪条件が重なっている国」と表している。
2月7日の気象庁の最新判定では、南海トラフ巨大地震が起きる確率は、10年以内に30%程度、30年以内に70~80%である。
ただ、「日本で一番、震度6弱以上の発生確率が低い」と言われていた能登半島で大きな地震が起きたわけで、いつどこで起きても不思議ではない。
昨年8月、30年以内に南海トラフ「80%」に疑義を唱えた『南海トラフ地震の真実』(小沢慧一著)という本が出た。同書によると、南海トラフの発生確率には80%と20%の二つの説があり、地震予知には限界があるということだ。発生確率などはあまり当てにならない。
大石氏は国土学の視点から、欧米は紛争死で亡くなっているが、日本は大半が災害死だと書いている。つまり、受容するしかないのが災害死である。
そして、人の力で自然などすべての環境を変えられると考える欧米と違って、日本は自然に委ねる「天為」の国と書いている。
日本人は複雑な国土がもたらす厳しい自然災害に処しながら、自然の恵みに感謝し、幾多の災害死を乗り越えてきた歴史がある。
厳しい冬を乗り越えた先に、能登半島に本当の春が一日も早く訪れることを祈るばかりである。
(光)