「最高の贈り物は剣」。アラブの古い諺(ことわざ)にそうある。アラブに限らず、人々が「剣」を最高の贈り物にしたことは東西の歴史が物語っている。自分の命を守る、部族や民族の命を守る。その武器たる「剣」が重宝がられたのは当然のことだろう。
第2次石油ショック最中の1980年代初頭、シュミット西ドイツ首相はサウジアラビアを訪問した際、「最高の贈り物」を求められ、それに応えて最新式レオパルト2型戦車などの武器を贈った。これで西ドイツはOPEC(石油輸出国機構)の最有力国サウジとの関係を強固にした。
同じ頃、日本から園田直(すなお)特使(元外相)が経済支援を手土産にアラブ諸国を訪問したが、「経済援助も大いに結構ですが、日本がわが国に真の友情を持っているなら武器を援助してください」と懇願された。これには沈黙し、友情は上辺(うわべ)だけのものとなった。
時の首相、鈴木善幸(ぜんこう)氏が東南アジア諸国を訪問した際にはこうも言われた。「日本が優秀な国産兵器を持っていながら、それをわれわれに供与せず独り占めしているのは、それこそ軍国主義復活につながると思われますよ」。国産兵器とは64式小銃や74式戦車、艦船などを指した。
それから40年。「最高の贈り物」は封印されたままだ。英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の第三国への直接輸出解禁に公明党が難癖を付けている。
これで真の友情、同盟関係を築けるだろうか。偽善的平和主義はお引き取り願いたい。