
日韓の防衛駐在官(ソウル)と駐在武官(東京)を経験した現職自衛官・軍人と退官OBで構成される「東友会」は発足してはや40年になる。元々国の護(まも)りに任ずる制服軍人同士は厳しい訓練や任務遂行の特殊性を共有し、どこか気脈が通じて、互いにリスペクト・親近感を感じるものがある。しかし、わが国が防衛駐在官を派遣している50カ国の中にあって、派遣国との間でこのような武官同士の会は日韓の「東友会」だけだと思う。
日韓には歴史的な諸問題が横たわっており、時として関係悪化に直面するが、地理的に一衣帯水の最も近い隣国であり、地政学的にも共通の脅威、課題を有する隣国である。諸説あるが、人種的に同じ黄色人種、人類学的に同じモンゴロイド、言語学的に同じウラル・アルタイ語族と分類されている。近年のDNA検査でも日韓両国人のDNA塩基配列がほとんど一緒だと報告されている。過去、云々(うんぬん)された日韓同祖論ではないが、これほど日本人と同質性、類似性に富む民族関係は他に見当たらない。「東友会」結成に至った大きな事由であろう。その後、東友会では日韓双方の留学生も会員とし大所帯になり各種交流イベントを重ねている。
近年、尹錫悦大統領になって日韓関係が改善されてきて極めて喜ばしいことであるが、前の文在寅大統領の時は、政権の反日姿勢に所謂(いわゆる)、慰安婦、元徴用工問題に加えてレーダー照射事案なども生じ、左翼の反日キャンペーン、そしてメディアの反日報道が相次ぎ韓国内が大きく揺れた。そんな折、韓国側の会員は「日友会(日本と友達の会)」と称すると連絡があり驚き、感銘した。反日的な世情の中、親日的な声を上げ、行動することは極めて風当たりが強く、相応の勇気が要ったことは想像に難くない。
時もその折日本では、クルーズ船のコロナ集団感染から感染拡大・死者増加で大騒ぎであったが、「日友会」から「コロナに負けるな!」とばかり多数の非接触型体温計が送られてきた。この日本の友人を思う細やかな友情に再び驚き感激した。彼らの友情と親日を憚(はばか)らない勇気ある行動にほだされてわれわれも「韓友会(韓国と友達の会)」を名乗ることになった。
日韓は今、北朝鮮や中露の脅威に直面し、厳しい安全保障環境に曝(さら)されている。日米韓の緊密な連携が強化されつつあるが、その成否の鍵は複雑で難しいと言われる日韓関係を超越した相互の信頼感と友愛意識である。
「日友会」と「韓友会」の輪が広く自衛隊と韓国軍全体に波及し、そして日本と韓国国民へと広く浸透して、互いが「近くて遠い国」から「近くて頼りになる国」になればと願って止(や)まない。(遠望子)