
元日の能登半島地震発生以来、不通となっていた「のと鉄道」が、石川県の七尾―穴水の全区間のうち約半分に当たる七尾から能登中島までの区間で運転を再開した。この鉄道で七尾市の高校に通う生徒も多く、「日常」を取り戻す大きな一歩となった。
のと鉄道は、地元の人々の足となる生活路線であるとともに魅力的な観光路線でもある。七尾駅の次が全国的にも有名な和倉温泉駅で、ここにはJR七尾線から直通で特急列車も乗り入れている。ただ、和倉温泉は旅館やホテルが深刻な被害を受け、まだ営業再開の見通しは立っていない。
この路線に何度も乗ったことのある気流子の目から見ても、車窓からの景色がいいのは、実はまだ不通となっている能登中島駅から穴水駅の間である。このあたりに来ると列車は海岸線に沿って進む。
車窓からは波静かな七尾湾や能登島が眺望できる。運転手も心得ていて、このあたりに差し掛かると若干速度を落として進むのである。
「能登さくら駅」の愛称で呼ばれる能登鹿島駅にはホームの両脇に100本近い桜の木が植えられている。普段は乗降客も多くない無人駅だが、桜の開花時期には、青い海を背景に列車を撮影したり、景色を見たりするため、県内外から多くの人が訪れる。
全線での運転再開は4月上旬を予定しているが、何とか桜の時季に間に合わせてもらいたい。桜と列車と海の三役揃(そろ)い踏みが、きっと癒やしと自信を与えてくれるに違いない。