日本初の月面着陸に成功した小型無人探査機「SLIM(スリム)」。月の周回軌道からまるで宅配便が目当ての場所に投げ下ろされたかのような感覚や、地球との間の距離を感じさせない着陸後のコントロールぶりを見て、月はずいぶん身近な存在になってきたと思う。
今後、月の表面の「カンラン石」などを採取し、月の組成を調べて衛星の存在の仕方、天体のでき方を調べる。どういった天体観が形成されていくのか楽しみだ。
1950~60年代、世界で初めて電離層の船上観測を成功させるなどした初期の南極観測船「宗谷」。その活躍ぶりを新聞などで見ながら心躍らせたが、それに似た興奮がある。以来、南極観測基地での気象観測や生物、地質・地形の研究は続いている。
当時の南極に対する国民のイメージは、今の月と同様の“秘境”感でなかったか。科学の発達が地球との距離感を一段と狭め、宇宙空間への親しみを増している。
地球から月に行くことが可能になったのは、周回軌道つまり軌道の発見による。宇宙は無数の天体で構成されていながら、その天体間、あるいは天体のつくる体系に円環運動の秩序が表れている。
米国初の月面着陸時、日本のある物理学者が「月面着陸で万有引力の法則の正しさが実証された」とコメントしていたが、改めて納得させられる事実だ。宇宙の中の秩序性、秩序の中の宇宙の存在と言えばいいか、法則によって成り立つ宇宙が実感される。