日本の安全保障政策上、重要な選挙が続く2024年。その中で、秋の米大統領選がハイライトとなる。現職バイデン氏(民主党)と前職トランプ氏(共和党)の一騎打ちが予想されるが、トランプ氏優勢との選挙戦情報が日本国内でも次第に浸透しつつある。だが、岸田政権は現バイデン政権に偏重し、米国政治の流れに対応できていない。
三頭政治とも言われ、自民党の岸田文雄総裁、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長が主流派各領袖として率いてきた与党体制は、先月の岸田派独自解散で大きく流動化した。国際情勢の逆境や危機意識に差し迫って、日本の将来と国益をかけて重大な決断を行うに「乾坤一擲(けんこんいってき)」との表現は本来ふさわしい。だが、日本政治は諸外国との戦略的外交を思考する猶予なく、内政上の党内主導権争いの勝負手にそんな表現があてがわれている。
三者の結束を自ら割ってでも岸田氏が独自の主導権維持に踏み出したわけだが、それには茂木氏を次期党総裁にと構想し、今国会での令和6年度予算成立後に岸田氏退陣を麻生氏が画策した背景がある。麻生派と茂木派は党の政治資金不記載問題で無風に近く、83歳にしてキングメーカーの麻生氏は次期共和党トランプ政権の可能性を見て、やはり先月に訪米しトランプ陣営への接触を試みた。
トランプ氏とは極めて親和性の高い安倍元首相、その盟友として知られたはずの麻生氏だった。だが、LGBT理解増進法を急いで通過させるなど、米民主党政権追従の働き鮮明にして、トランプ氏が安易に面会するはずもなかった。日本の戦後政治と自民党史を俯瞰(ふかん)し得る今日の筆頭政治家たる麻生氏が、なぜ共産主義革命から日本を護(まも)るに共闘した国際勝共連合を、旧統一教会解散をもって安易に葬ろうとしているのか。安倍政治を支えた同じ人物とは思えない今日の麻生氏は政治的非力とも映ったことだろう。
一方の岸田氏は著書『トランプのアメリカ ・その「偉大なる復活」の真相』でも知られるトランプ氏支持のギングリッチ元米下院議長との党政調会長時代の面会写真を報道されるや、米共和党やトランプ氏への人脈としてではなく、旧統一教会との関係をぼかす説明に終始する器の小ささを露呈した。
現在国会では衆院予算委員会が進行中だが、参院のそれを前に、一昨年の10月18日から19日にかけて岸田首相が宗教法人法の解釈を変更した、その「閣議決定の有無と内容」を問う質問主意書が浜田聡参院議員によって提出された。岸田氏は当時参院予算委員会で、旧統一教会の解散命令事由として民法上の不法行為は「入らない」から一夜にして 「入りうる」と答弁を変更した。だが、その変更のための閣議は記録行政文書すら存在しないのだ。これについて、朝日新聞記者が、内閣官房内閣総務官からこうした文書が存在しない旨の回答を受領している。
世間で弱者となった旧統一教会を与野党相乗りで、手続きもいい加減に宗教法人解散に追い込み、信教の自由という基本的人権を侵そうとしている。これも岸田氏が行う日本での政治について米国政界に疑念を抱かせた代表的事例だ。4月10日に国賓訪米を掲げる岸田氏だが、国内に分断をもたらし犯罪率も高めた尻すぼみバイデン政権の何の言いなりになるのか、不安は尽きない。(駿馬)