能登半島地震で大きな被害の出た石川県七尾市は、オジロマコトさんの人気漫画「君は放課後インソムニア」(君ソム)の舞台。作品に登場し「聖地」となった喫茶店やお好み焼き店も被災したが、店主らが再開に踏み出しているという記事(小紙5日付)を読んで心強く思った。
君ソムは、共に不眠症の悩みを抱える高校生の男女が、天文部の活動を通じ心の交流を深めていく青春ドラマ。七尾市や能登の風景を忠実に再現しているのが、一つの特長だ。昨年テレビアニメや実写映画が公開され話題となった。
同市に住む友人によると、7月恒例の港まつりも例年に比べかなり人出が多く、君ソム効果以外考えられないとのことだった。
聖地の一つ、1953年創業の「中央茶廊」のマスター、窪丈雄さんは「カウンターの照明や壁のタイルは無傷。聖地としての雰囲気を壊さずに直したい」と言っている。
「お好み焼 平野屋」は、先月16日から営業を再開。断水が続く中、メニューは限定されるが、店を切り盛りする杉本祐一さんは「皆さんに温かいものを食べてもらいたい」一心で腕を振るっている。茫然(ぼうぜん)自失の状態だった地元の人たちが、復興へ向け立ち上がる切っ掛けとなったのは、ファンや地元のためにという思いだった。
君ソムでは、主人公の2人が夏休みに合宿に出掛ける奥能登も重要な舞台だ。七尾市の白山神社や能登町の真脇遺跡公園も被害を受けたが、聖地として復活させてほしい。