東京郊外に住む知人から、「聖書」を買いたいから、どれがいいか教えてほしいという連絡があった。
聖書はよく知られているように、いくつかの違った訳書がある。
旧漢字で旧仮名遣いの聖書が名訳で名文だという話を、文学者などが書いているのを読んだことがある。
一時、それを探し回ったことがあり、古書店で安く手に入れたことがある。名訳というので読んでみると、その擬古文のような荘重な調べと旧漢字の難しさに、少しでお手上げになったことを覚えている。
口語訳の聖書の翻訳というと、どれも同じように思えるが、案外、それがカトリック版かプロテスタント版かによって微妙に違う部分がある。
それぞれの教義の根拠となっている部分が特にそうである。宗派による違いもあるが、その上に、印刷が発展していなかった時代には、手書きで写していたので、ケアレスミスもあったりする。
それで、そうした問題を解決するために、カトリックとプロテスタントが協力して、現在では「共同訳」という宗派を超えた訳も出ている。
そうした経験からすると、どれがいいか筆者もあまり分からないので、書店に行って相談したらいいとアドバイスしたところ、「その書店が閉店している」という。
書店の閉店は、最近よく聞くが、郊外でもそういう現象が次々に起こっているのか、と改めて驚いたことだった。
(羽)