【上昇気流】(2024年2月2日)

坂倉準三(Wikipediaより)

東京の新宿駅西口、渋谷駅周辺は、通勤や人との待ち合わせなどで気流子もよく行く。ここが1人の偉大な建築家によって設計されたことを、NHK日曜美術館「戦後新宿・渋谷をつくった建築家 坂倉準三」を観(み)て初めて知った。

坂倉はモダニズム建築の巨匠、ル・コルビュジエに学び、1937年にパリ万博日本館でデビュー。戦後、渋谷の東急会館や岐阜県羽島市庁舎、さらには高速道路トールゲートなど数々の建築や都市計画を手掛けた。目指したのは「人間のための建築」。

機能性を重視し、装飾性を排したモダニズム建築は、人によって好き嫌いはあるだろう。幾何学的で冷たい印象を受けるものもある。しかし日本においては、高度経済成長期を象徴する建物だった。

坂倉の偉大さは、モダニズムと日本建築の特長を融合させたところにある。建築部門のグランプリを受賞したパリ万博日本館がその代表だ。鎌倉の神奈川県立近代美術館も、周囲の自然と調和させた日本的モダニズム建築と言えよう。

番組を観て、なるほどと思った。かつての渋谷駅周辺の利便のよさは、坂倉の利用者のことを十分考えた設計によるものだった。

渋谷駅周辺は今、再開発で高層ビルがぼんぼん建っているが、気流子などにはどんどん不便になっていくように思えてしょうがない。新宿駅西口広場も今年、再整備の工事が本格化するという。坂倉が目指した利用者の立場からの開発を忘れないでほしい。

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