【上昇気流】(2024年1月31日)

日本の月探査機「SLIM(スリム)」

米国建国の父ベンジャミン・フランクリンはフィラデルフィアで新たな入植者の受け入れ役を担い、『アメリカに移住しようとする人々のための情報』(1760年)を著した。

それには「新天地」は出自ではなく、何ができるのか、何をするのかが問われるとし「セルフメイド・マン(自ら作り上げる人)たれ」とある。フランクリン自身、印刷業を営む職人だった。当時、フィラデルフィアは米国随一の職人の街で、納税者名簿に記載された戸主3350人中1772人が職人で、その職種は100近くにも上った。

19世紀に米国を視察したフランスの経済学者は「アメリカ人は生まれついての職人である。機械や道具を一つも考案したことのない働き手は存在しない」と感嘆している(森杲〈たかし〉著『アメリカ職人の仕事史』中公新書)。それが米国を超大国たらしめた所以(ゆえん)だろう。

日本の月探査機「SLIM(スリム)」が月面に着陸している様子を撮影した超小型ロボット「SORA―Q(ソラキュー)」は、玩具メーカーのタカラトミーなどが共同開発したものだ。球状から変形し、両脇の車輪で月面を走行して撮影した。まさに職人技である。

タカラトミーと言えば「チョロQ」が思い浮かぶ。ゼンマイバネで駆動する手のひらサイズのミニカーで、日本の子供であれば誰もが知っている。それが宇宙開発を牽引(けんいん)している。日本人も生まれついての職人である。「SORA―Q」はその証しのように思われる。

 

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