
英国やドイツより人口の増減に敏感といわれるフランスは2010年、女性が一生に生む子供の数である合計特殊出生率が2人を超え、世界の注目を浴びた。だが、仏国立統計経済研究所(INSEE)が16日に公表した23年の出生率はわずか1・68だった。
これについて、国立人口学研究所(INED)の研究者は「出生率は今後7~8年間さらに低下し、30年~35年の間に再び上昇する」と楽観的だ。出生率が上昇した1998年から2013年の間に生まれた女性が成人し、子供を生み始める時期に入るからだ。
出生数から死亡者数を差し引いた数値は4万7000人。さらに23年に流入した移民の数からフランスを離れた移民を差し引いた移民人口は18万3000人で、人口増に貢献している。そもそも近年の出生率の低下は出産適齢期の女性の数の減少が主要因だ。
人口減は政府の公共支出軽減につながる一方、高齢者を支える労働人口の減少は国の経済に深刻なダメージを与える。先進国の中で最も長く働きたくないフランス人にとっては労働人口の減少はマイナスでしかない。
出生率が下がったといっても他の欧州諸国に比べれば高い。理由は長年きめ細かな子育て支援を実行してきたからだ。ただ、長年の経験から、ばらまきとも言える出生時の支援だけ増やしても、出生率向上につながらないことは証明済み。働き方の改善、仕事と子育ての両立を含め、社会環境全体の整備の重要性が強調されている。(A)