【上昇気流】(2024年1月30日)

連続企業爆破事件の桐島聡容疑者

約半世紀前、日本中を震撼(しんかん)させた連続企業爆破事件。これに関与し重要指名手配された極左過激派「東アジア反日武装戦線」メンバーの桐島聡容疑者(70)とみられる男が警察に身柄を確保されたが、末期がんで神奈川県の病院で死亡した。

男は偽名で藤沢市の工務店に住み込みで働いていた。桐島容疑者かどうかの確認は、DNA型鑑定を待たなければならないが、本人でなければ分からない家族に関する話もしており、警視庁は桐島容疑者の可能性が高いとしている。

1974年8月の東京の三菱重工ビル爆破では、8人が死亡し、約380人が負傷した。あの凄惨(せいさん)な事件が日本社会に与えた衝撃が蘇(よみがえ)る。未遂に終わったが、彼らは昭和天皇のお召し列車の爆破も計画していた。

当時は70年安保闘争の挫折の中、赤軍派などによる極左過激運動が先鋭化した時代だった。東アジア反日武装戦線による爆破事件は、残忍な無差別テロだった。

海外進出企業を標的にしたのは、日本の「アジア侵略に加担している」という飛躍した短絡的な思想からくる。日本人の組織が「反日」を名乗ること自体が異常だった。戦後の贖罪(しょくざい)史観が背景にあるのだろうが、国外からの影響の可能性もある。

男が桐島容疑者だとすれば、その死によって事件の真相や逃亡の幇助(ほうじょ)者の有無などを追及する決定的手掛かりが失われたことになる。彼らの「反日」思想がどう形成されたのかを解明する重要な鍵も消えたことが悔やまれる。

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