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インド北部アヨディヤで、イスラム教のモスクの跡地に与党インド人民党(BJP)肝煎りのヒンズー教寺院が開設された。祝賀ムードに沸く一方、宗教間の緊張を懸念する声が上がっている。
16世紀にヒンズー教寺院の跡地に建てられたモスクが1992年にヒンズー教徒によって破壊され、イスラム教徒との衝突で約2000人が死亡している。アヨディヤはラーマ神が誕生した地とされ、ヒンズー至上主義団体が寺院建設を主導していた。
それら団体の支持を受けるモディ首相は落成式に出席し、寺院の開設はインドの「新しい時代の先駆け」と語った。一方、最大野党・国民会議派は「政治的プロジェクトだ」として欠席した。英BBCも、今年行われる総選挙を意識したものとの見方を示している。
ある宗教の施設を、力を持ち主流となった他の宗教が、自分たちの礼拝所などに替えてしまうということは歴史上、多々あったことだ。初期キリスト教の教会建築は、長方形で身廊と左右の側廊から成るバジリカ様式と言われ、ギリシャやローマの神殿や集会所を替えたものである。
しかし、それは宗教が争っていた時代のことだ。近現代は融和が進んできた。正教寺院からモスクに替えられたイスタンブールのアヤソフィアも博物館だったのが、それを象徴していた。
ところが、2020年7月から再びモスクとして使用されることになった。宗教対立の政治利用は最も避けねばならないことだ。