トップコラム【政界一喝】首相は孤立、党改革は進む

【政界一喝】首相は孤立、党改革は進む

あす1月26日の通常国会開会を前に、昨年末からの自民党政治資金問題とこれに対する東京地検特捜部の捜査もひと区切りを迎えた。

安倍派はリーダー5人衆らがメディアにさらされ、改造内閣では官房長官を含む同派所属の閣僚4人と副大臣5人、政務官1人、首相補佐官1人、防衛大臣補佐官1人の計12人が事実上更迭され、社会的制裁を存分に受けた。政治資金の不記載額が大きかった所属議員3人は刑事訴追が決まり、議員辞職、公民権停止も視野に入った。

東京地検による強制捜査は安倍派に加え、二階派にも入っていた。だが派閥の会計責任者の刑事立件はさらに岸田派にも及んだ。捜査の根拠となった元々の刑事告発は五つの派閥を対象としており、捜査結果は立件を免れた麻生派、茂木派との間で太く線引きされたのである。「岸田派を立件へ」と報道がなされるや岸田文雄総裁は「岸田派解散」へと急きょ舵(かじ)を切った。運命をたがえた麻生派と茂木派の各領袖に対しては、その際に事前通告もなかったという。

100人にも及ぶ大量動員となった特捜部の検察官とて国家公務員。行政組織の最高責任者は岸田文雄首相だ。だが国民の支持を失った首相は、国家公務員法の守秘義務違反を犯してまで、異例のボリュームで刻一刻と情報リークされるマスコミ報道からしか捜査の動向を知ることができなかったのだろうか。

法務官僚からも検察官僚のからも確実な捜査報告を受けられないまま、進行する社会的制裁という曖昧な根拠から安倍派閣僚ら(計12人)の更迭人事権を暴発させた岸田首相。ついには青天の霹靂(へきれき)が如くの岸田派立件への報道を耳にするや、今度は党全体への考慮もなく、派閥会長はおろか派閥自体から離脱したはずの、これまた曖昧な資格で岸田派解散のみを宣言したのだ。

「これをやりたかった」と首相が大いに振るったこうした人事権。先の改造内閣でもその行使の根拠は適材適所というより、党内派閥の論理であった。その論理の中でも麻生派と茂木派との結束こそは党内主流派としての権力の核心であった。だが、両派は派閥を残す意向を固めたとみられる。国民の支持なく、官僚からは軽く見られ、ついには麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長という党最高幹部らとも袂(たもと)を分かつに、首相は一気に孤立感を深めた。言葉だけが躍りがちな首相の「解散」の掛け声は表層的だ。国民の政治への信頼も全く回復しない。世論調査の数字もそれを示している。

一方で来年度予算や外交の諸課題を考えると、自民党は今こそ、かつて幾度となく発揮したレジリエンス(resilience)を体現すべきだ。派閥の教育効果、政策集約機能など評価すべきは維持し、資金管理では政策集団に限らず、議員個々人の順法精神の徹底に立ち上がるべきだ。派閥論理の陰に閉じ込められた無派閥人材にも光が当てられよう。有志議員による「政治(まつりごと)変革会議」の提言、日本の国家安全保障に関わる「外国人パーティー券問題」など全面的に俎上(そじょう)に挙げ、国民にもわかりやすく改革してほしい。(駿馬)

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