
埼玉県飯能市にある天覧山(197㍍)は、初心者やファミリーに人気のある山だ。頂上からは都心の高層ビル群やスカイツリーを遠望することができる。麓の能仁寺のそばの登山口から15分とマップにある。
ところでここは、日没から日の出まで立ち入り禁止となっている。登山口にその表示があったが、理由が分からなかった。頂上で、月2回、登りに来ているという地元の老人に出会い、聞いてみた。
「秩父から山がつながっていて、クマがドングリを求めてここまでやって来るのです」とのこと。隣の山、多峯主(とうのす)山には表示がないので、それについて聞くとコメントはなかった。麓には住宅地もあり、疑問を感じた。
下山後、観光案内所で尋ねると「夜間の登山は、危険だからでしょう」との返答。だが、危険性があるようなルートではない。そこで、駅の中にあるアウトドアショップの店主にも尋ねてみた。
「去年、頂上で焚(た)き火をして、お酒を飲んだりしていた人たちがいました。そういうことが何件かあり、禁止にしたのです」。2021年に来た時も表示があった。
そこでこれを示した市役所に聞いてみると、やはり焚き火が理由だった。火の不始末があっては困ると、地主の要請で立ち入りを禁止に。だがそれを破って、夜間、焚き火をする人がいるらしい。この例は、情報の持つ性質について示しているように思われた。人の考えること、正解に達しないことがよくあるのだ。