トップコラム【上昇気流】(2024年1月24日)

【上昇気流】(2024年1月24日)

孤立が解消され、明かりのともった避難所=19日午後、石川県珠洲市の大谷地区

有史以来、自然災害は絶えない。それが日本の宿命であれば、それをどう捉え、どう生きるべきか――。元日に発生した能登半島地震の「心の余震」が続いている。それで「天災は忘れた頃にやってくる」の警句で知られる物理学者、寺田寅彦の言を繰ってみた。

「われわれ人間はこうした災難に養いはぐくまれて育って来た」のであり、「艱難汝(かんなんなんじ)を玉にす」の言葉にあるように「日本人を日本人にしたのは実は学校でも文部省でもなくて、神代から今日まで根気よく続けられて来たこの災難教育であったかもしれない」(「災難雑考」)。

寺田は「艱難汝を玉にする」と述べていた。災難が創意工夫に富んだ日本人をつくり上げたというのだ。辞書を引けば、この格言は西洋のことわざ「逆境は人を賢くする」の意訳だという。それで逆境を克服した西洋の国を思い浮かべた。

洪水に苦しんだオランダは逆にその水を生かして運河を巡らし、寒村アムステルダムを一大商業港に発展させた。英国の産業革命は大都会のロンドンでなく、沼地と荒れ地だらけのヨークシャーやランカシャーから始まった。何もないから創意工夫を重ね、水力紡績機などを次々と発明した。

令和の日本人はどうだろう。艱難や逆境から逃れることに汲々(きゅうきゅう)とし、それに立ち向かう気迫に欠けてはいまいか。神代からの災難教育を継承していると胸を張れる「ナショナル・レジリエンス」(国土強靭〈きょうじん〉化)を論じる時であると改めて思う。

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