世界の命運を左右する台湾総統選が終わった。蔡英文総統の後継として路線を引き継ぐ与党民進党の頼清徳副総統が最大野党中国国民党の侯友宜新北市長等を破り、新総統として選ばれた。
中国との関係改善と目先の経済的利益より、台湾の独自性を守って民主主義を守るという台湾国民の民意が示されたと見るべきだろう。
選挙運動期間から中国の台湾への内政干渉・恫喝(どうかつ)は露骨かつ執拗(しつよう)であった。
頼氏は当選後「2024年世界選挙イヤーにおける民主主義陣営最初の勝利を台湾は成し遂げた。民主主義と権威主義の狭間(はざま)で台湾は民主主義の側に立つことを選択したと世界に発信した。外部勢力の介入に抵抗することに成功した」と語った。また勝利演説で、「中国からの継続的な脅威や脅迫から台湾を守る決意がある」と述べている。
頼氏の当選で、台湾の民主化始まって以来となる民進党候補の3連勝となった。
中国経済が巨大化し世界への影響力が拡大する中で、中国の、国際社会において台湾を孤立させ中国への併呑(へいどん)を図る工作は益々(ますます)手段を択ばず過激化する可能性が高い。
歴史を振り返れば、帝国主義の時代、日本は台湾と朝鮮半島を領有した。
紆余曲折を経た現在、朝鮮半島に韓国、南西諸島の西に台湾という自由民主主義国家が中国に飲み込まれず存在していることは日本にとって死活的に重要である。
日中共同声明で日本は、「『台湾が中国領土の不可分の一部である』との立場を理解し尊重する」との表現を用いたが、その表現だけでは、日本が公式に台湾を中国の領土であると認めたことにはなっていない。
今や、台湾は日本と並びアジアを代表する近代化された民主主義国家である。従来の対米追従の外交姿勢から一歩踏み出し、台湾政府と公式の外交関係を結ぶことで強く台湾を支援すべきである。
中国の強い反発は必至であるが、これで直ちに武力侵攻に踏み切ることはないであろう。日本との断交が最も強い措置である。これに伴う痛みは甘受する決意が必要である。その痛みが民主主義諸国家との連帯を強め将来の日本の強い再生を生み出す。
今年11月に予定される米大統領選は、結果がどうであろうと米国内の分裂を深め、国際社会における米国の指導力は低下する可能性が高い。欧州は今年もウクライナ対応に手いっぱいであろう。アジアでは日本の強い決意とリーダーシップが期待されている。(遊楽人)