地震は便宜的に海溝型と直下型に分けられる。能登半島地震は津波が起きたので海溝型地震だと思われがちだが、震源の深さが約16㌔の直下型地震で、マグニチュード(M)7・6。震源が浅いので大きな被害が出た。直下型は例が少なく研究が進んでいないが、改めてその威力を見せつけた。
2016年の熊本地震も大きな被害を出した直下型。上田誠也・東大名誉教授(地球物理学、23年死去)は「経験的な事実としては2004年の中越地震以外あまりなく、熊本地震でようやく新しい知見が得られた」とその後の研究に期待したが、進展はない。
緊急地震速報も直下型に関しては観測体制が未整備だ。異常が観測された時にその情報を社会に伝達し、対策を講じる仕組みが整っていない。
能登半島地震の被災地では、雪などの影響でなかなか支援活動が進まない状況だが、被害は質の違いが感じられるほど大きい。観測体制の無力も影響しているだろう。
1995年、6400人の死者を出した阪神・淡路大震災も直下型で、その後、被害の縮小に地震予知の研究を生かせないかと、さらに国費が投入された。しかし、これも進んでいない。
直下型というと頭に浮かぶのは、今後30年間に70%の確率で発生するとされる首都直下型地震。南関東でM7級の地震が発生した場合、死者は最大約2万3000人と想定されている。今回の地震の被害内容からどんな教訓を得られるのか、真剣な論議が必要だ。