東京都調布市にある深大寺の一帯は、豊かな樹林に囲まれ、今も武蔵野の面影を色濃く残している。このエリアだけ別の時間が流れているかのようだ。参道にはそば屋が並び、参拝客でにぎわっている。
初詣客が少なくなった頃合いを見て、出掛けて行った。寺の北側の植物公園臨時駐車場に車を止めたので、山の上から下るようにして境内に。一番上にあるのが開山堂で、開基満功上人と天台宗第一祖惠亮和尚の尊像を祀(まつ)っている。
ここからの眺望が素晴らしい。眼下に元三大師堂や本堂の屋根が見え、参道からバス通りまで遠望できる。ここで手にしたのが「白鳳院建立計画再開〈最新版〉」の案内だった。
現在、釈迦堂に安置されている釈迦如来像が国宝に指定されたのが2017年。東日本にある最古の国宝仏だそうだ。飛鳥時代後期、7世紀後半から8世紀にかけての白鳳期の作で、天台宗に改宗する前、法相宗時代の本尊とされている。
椅子に腰を掛けている倚座(いざ)で、流麗な衣装をまとい、清純な微笑を浮かべている。これが国宝に指定されたことから、深大寺では安置するための「白鳳院」の建立を計画したが、コロナ禍や国際情勢などで延期した。
だが現在は計画を再開し、27年の落慶を目指しているという。案内には場所を示す地図が掲載されていて、バス通りを挟んだ南側に位置している。設計は隈研吾氏。どのような建物が現れるのだろうか。新名所となるに違いない。