【上昇気流】(2024年1月16日)

波静かな穴水湾を渡御する神輿とキリコ=沖波大魚祭り

能登はやさしや土までも――。石川県能登に行くとよく聞く言葉である。いつ頃から言われているのか調べてみると、少なくとも元禄時代にまでさかのぼるようだ。

加賀藩士の浅加久敬が元禄9(1696)年に能登を巡った際、人々からもてなしを受けて純朴な人情風俗に触れ、その通りだと旅日記の中に記している。幕末の書物にも見られる。

能登は海山の幸に恵まれ、自然の豊かな土地である。一方、冬は日本海からの季節風が強く、外浦地域では家々の周りに「間垣」と呼ばれる竹垣を巡らし、独特の景観をつくっている。厳しい自然環境の中で人々は助け合って生きてきた。

能登は祭りの盛んな土地でもある。特に奥能登では「キリコ祭り」が有名で、集落ごとに男たちが担ぐ巨大な灯籠が夏の夜を彩る。こういう祭りを通して強固なコミュニティーをつくり上げているのも能登の特長と言える。

能登半島地震発生から2週間が過ぎ、避難所に身を寄せる人たちには疲れが蓄積して感染症も広がりつつある。災害関連死を防ぐため、県内外の施設への2次避難が喫緊の課題となっている。県内では加賀地方を中心に受け入れる準備は整いつつある。

しかし一時的とはいえ、長年住み慣れ、愛着のある土地を離れることに躊躇(ちゅうちょ)する人は少なくない。高齢者は特にそうだ。だが、命には代えられない。集落の繋(つな)がりを維持し、遠くない時期に戻れるという見通しを示すことが説得の鍵になるだろう。

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