【上昇気流】(2024年1月15日)

小池百合子知事

東京都の小池百合子知事は2024年度予算案の知事査定で、所得制限を撤廃し、都立と私立高校の授業料を実質無償化することを決定した。都立の大学・高専についても同様に所得制限撤廃、授業料の実質無償化を行う。「子供たちが将来にわたって安心して学ぶことができる環境を早期に実現していく」と。

教育の普及は、総体的に国が豊かになったことを顕著に表すもので、素晴らしいことだ。しかし教育の眼目の一つは、生徒に知識や真理の尊さを教え込むこと。それを得るために命を懸けた先人に思いを馳(は)せることだ。

“ただ”で受けられる授業、講義に生徒や学生はよりありがたみを感じることができるだろうか。教育を受けるのは一つの特権であり、それに感謝し対価を支払うのは当然であると主張する人たちがいるのは、そういう理由からだ。

所得制限撤廃によって都立高は41億円の歳入減となり、私立高に関しては関連費用計600億円を計上する方針。財政的に余裕がある自治体のなせる業で、近隣自治体との格差が如実に表れるのは避けられない。都内に転居するなど人口集中に拍車が掛からないか。

小池知事は以前から教育支援の政府主導を主張しており、今回の措置は国政へのアピールとも言われる。今年は都知事選があり、国政でも衆院解散・総選挙の可能性をうかがわせる。

無償化の論議は、政争の具となりかねない。教育問題の議論を深化させる場となるのを願うばかりだ。

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