【上昇気流】(2024年1月11日)

日本海

日本海はその成り立ち、あるいは海底の構造から「本当の海」とは言い難いという地質学者がいる。マグマ学を専門とし、世界中の石の「つぶやき」に耳を傾けてきた巽好幸さんだ。

地球には海がある。その地盤である海洋地殻はやや重く、それに比べて大陸地殻はやや軽い。海洋地殻は玄武岩質、大陸地殻は安山岩質で、両者は重くて柔らかいマントルの上に浮かんでいる。

地殻が分離したのは雨が降った原始地球だ。著書『「美食地質学」入門』(光文社)で詳述しているが、日本海はこの大陸地殻からできているので「本当の海」ではないと語った。

日本海がどのように形成されたか解き明かしたのは、地球物理学者の寺田寅彦だ。アジア大陸の地盤が裂け、片割れが太平洋へと動き出して日本列島をつくり、その隙間に日本海を出現させたと1927年に学説を発表した。

この学説が認められたのは70年代後半になってから。富山湾内の断裂帯や、能登半島北部の断層は、日本海を生み出した大事件の痕跡なのだという。分離は約2500万年前に始まり、約1500万年前に現在の位置に。

今回の能登半島地震で半島北西部が最大約4㍍隆起し、海岸線が海側に約250㍍移動した。巽さんは、こうしてつくられた地殻と海洋の環境だからこそ、日本海深部にはズワイガニやベニズワイガニの好む冷水域が形成され、冬の味覚の王者として喜ばれているという。日本列島で禍と福は共存している。

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