2023年は、ロシアのウクライナ侵攻に明け暮れ、ハマスの奇襲攻撃とイスラエルの激しい反撃が加わり、一向に事態収拾の道が見えていない。明けて2024年は、元日から能登半島大地震、羽田空港航空機衝突事故と災難が相次いだ。国中が惨状に嘆き悲しみ、災いに対処するのは当然だ。が、一方で、政治も国民も内向きばかりに陥らずに、もっと四周を見渡して外向きに国家、安保、外交を論じてほしいものだ。
ウクライナでは、先進7カ国(G7)を主とする武器支援の効果は質量ともに時宜を失してウクライナ軍の反攻作戦は難航膠着(こうちゃく)し、防衛線を構築し長期戦の構えに転じている。一方のロシアは、国際批判に晒(さら)され経済制裁に喘(あえ)ぐはずとの予測に反し、プーチン体制は揺らぐことなく戦争目的達成の長期戦の構えである。
このような民主主義国家と権威主義国家との対峙(たいじ)が際立ってきた不安定な国際情勢の中で、世界は新たな国際秩序を念頭に現有の外交安保戦略の見直し、同盟・同志関係の再構築に余念がない。
然るにわが国会では、旧統一教会問題や「政治とカネ」の問題など内向き色が強く、かつ、低レベルの政争に明け暮れている。まさに内憂外患の中、政治的リーダーシップが欠けて直面する課題に決断も解決もできない日本に不安を感じるのは筆者ばかりでないであろう。
特に今年は世界にとって重要な選挙が目白押しの年である。この13日には台湾の総統選、4月には韓国の総選挙、11月には米国の大統領選が控えている。結果によっては日本の安全保障環境を大きく揺さぶることになる。注視するとともに先行的に対応戦略を練り万全の準備を整える必要がある。
中国の習近平独裁体制は、中華民族の偉大な復興、米国に比肩する強軍化、そして台湾併合・統一を必ずやと追求している。台湾有事は日本有事。備えと覚悟が求められている。北朝鮮は、核・ミサイル開発主体の「国防5カ年計画」に基づき軍事力強化に突き進んでおり、戦術核の先制使用も辞さないと日米韓を威嚇し対決姿勢を鮮明にしている。
最悪のケースは台湾有事が日本有事にとどまらず、朝鮮半島有事、加えて中朝露の連携した作戦行動の可能性である。いかにしてこの迫りくる危機に対処するのか? まずは防衛力を増強し日米同盟を基軸に日米韓の緊密な連携のもと抑止力を高めること。外交力を駆使して新たなる同志国の枠組みを構築することであるが、その前に必須なのは国民の有事に立ち向かう覚悟と備えである。これまで放置された大きな課題であるが、いかに対処すべきか政治的決断とリーダーシップが求められよう。(遠望子)