
「能登には、黒瓦の屋根と下見板張りの伝統的な住居が多く、統一感のある景観と独特の風情を生み出している」――。世界農業遺産活用実行委員会の「能登の里山里海」という文章の一節である。
海に向かって黒瓦の屋根で統一された家々が立つ――。能登半島の典型的な景観で、これを見て能登に来たと実感する人も多いだろう。
この黒瓦は「能登瓦」と呼ばれ、厚みがあって黒い釉薬(ゆうやく)が塗られている。風や雪に強く耐寒性に優れているのが特徴だ。一方、夏の天気の良い日には、きらきら光るのがまた美しい。
「材料に能登の水田の土を使い、山の薪を燃料にして、七尾市や珠洲市などの農村地帯で生産されてきた」という。冬は厳しい寒さと雪に覆われる能登の風土から生まれたものだ。
元日に起きた大地震で、輪島市や珠洲市の黒瓦の家屋が潰(つぶ)れる被害が多数出ている。崩壊した多くは伝統的な古い家屋だ。厚みのある能登瓦は、当然重い。建物が古くなり、柱など屋根を支える部分の強度が下がると、大きな地震が起きれば支え切れなくなるのだろうか。
もちろん能登瓦の屋根でも、しっかり立っている家は遥(はる)かに多い。それでも今後、能登瓦の使用は減っていくのではないか。能登半島独特のこの景色を残すために、瓦の厚さや素材を改良し軽量化するのも一つの道だろう。もっとも、これは先の話。今は行方不明者の救出や、電気、水道、そして寸断された道路などの復旧に全力を挙げたい。







