中国の古書によれば、辰年の辰は「振」の振るうという意味があり、陽気が動いて万物が振動し草木を成長させるという。それがまさか元日に大地まで揺るがすとは。
石川県能登地方を襲った大地震は、地下深くにある高温の水(流体)が上昇し、断層に入り込んで引き起こしたという。まるで海中から龍が立ち上ってきた感がする。
この地域は北米プレート(岩盤)とユーラシアプレートが互いに押し合い、しばしば地殻変動をもたらす。2007年の能登半島地震では余震が500回以上も続いた。今回の大地震も現在進行形だ。政府には救援、復興に全力を挙げてもらいたい。
初夢は元日から2日にかけて見る夢をいう。江戸時代には縁起のいい初夢を見るために宝船の絵を枕の下に敷いたというが、2024年は枕元にスマートフォンを置いて緊急速報に備えた人も多かろう。
被災地からの映像は悪夢だった。大津波警報は東日本大震災(11年)以来で、ビル倒壊や火災発生は阪神・淡路大震災(1995年)、避難所が被災したため車中泊を余儀なくされる姿は新潟県中越地震(2004年)を思い起こさせた。いずれもさまざまな教訓を残したが、改めて課題が突き付けられた。
宝船の七福神には武神の毘沙門天がおられる。大黒天や恵比寿天(びしゃもんてん)らがもたらす食と財を守るためだろう。有事は天災だけではない。人災の最たる戦争が各地で続いている。国の守りは大丈夫か。毘沙門天を想起した年頭である。