知人がリハビリ施設を退院するので、当日知人宅の前で待機していると、車椅子のまま移動できる介護タクシーで帰宅。運転手を兼ねた職員が2階までの階段に板状のスロープを敷き、80㌔余りの知人にぴったり寄り添って上って来た。
知人が利用したのは介護保険が適用され、通院など用途が限られる介護保険タクシー。この種のサービスの現場を見たことがなかったので驚いた。
一方、保険は効かないが車椅子のまま乗車でき、当人の指示で出先での介助が受けられる福祉タクシーもあるそうだ。利用者と運転手の相性が良く長期間にわたり任せられる事業者を見つけられれば、自力での移動がままならない人には欠かせない移動手段になるように思う。
在宅の高齢者で介護が必要か、寝たきりの人は、それぞれ100・4万人、31・6万人(平成14年版高齢社会白書)で、人口比で欧米よりかなり多く、年々増えている。
欧米では、再び自力で歩けることを目標にした介護が主だ。しかしわが国では、一度寝込むと家人は干渉することを控え、むしろ自由にさせておくことを良しとし、結果、「寝かせっきり老人」になってしまうのだ。本人は花見や各種のイベントに出掛けたいと思っても、家人に遠慮してしまうという悪循環だ。
高齢者の要望を聞き、例えば要介護度が低い人たちには、レジャーを提供する介護タクシーにするなどの工夫もできるだろう。供給側は事業拡大の機会を得られるはずだ。