【上昇気流】(2023年12月15日)

今年の夏は1898年の統計開始以来の記録的な猛暑だった。師走の寒い季節ともなると遠い昔のことのように思えるが、地球温暖化は確実に進んでいる。

夏の暑さと共に気候の変化を強く感じさせるのは、雨の降り方が昔と違ってきたことだ。先日、仕事帰りに駅に降り立つと雨が降っていた。冬にしては降り方が半端でない。コートに付いているフードを被(かぶ)るくらいではダメで、仕方なくコンビニのビニール傘を買った。

日本人は古来、四季の微妙な移り変わりの中で生活し、そこに味わいを感じてきた。雨の降り方も季節によって違うし、その季節でも微妙に変化する。今の時期に降る雨を時雨(しぐれ)と言い、俳句では代表的な冬の季語だ。

時雨れることが多い北陸育ちの気流子にとって、小さい頃、時雨は灰色の空から降る嫌な雨でしかなかった。それが年を取って、芭蕉の「旅人と我名呼ばれむ初時雨」の句などに出会い、その味わいを知るようになった。

時雨の情景は、山里などが最も似つかわしく風情がある。しかし「しぐるゝや駅に西口東口」(安住敦)の句のように、都会でも詩情を醸し出す。

さぁーと降って木々の梢(こずえ)や地面の落ち葉を濡(ぬ)らし、そのうち止(や)むというのが時雨の典型的イメージだ。だが先日の雨は、ビショビショとしつこく降り続いた。こうなると、時雨という名前を冠することはできないのではないか。日本文化の基層を成してきた季節感が崩れつつあるのは、悩ましい限りだ。

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