【上昇気流】(2023年12月13日)

「さっぽろホワイトイルミネーション」11月22日

普段は暗く沈んでいる街角に飾りが施され、それが色とりどりに点灯し、人々の目を奪う。例年の師走のイルミネーションとはいえ、通りはさまざまな顔を持っていると改めて思う。

イタリアの作家アミーチスの『クオーレ』(1886年)にそんな通りの話がある。主人公の小学4年男子エンリーコは街で出会った傷痍(しょうい)軍人を避けて通った。これを知った父親は「通りを重んじなさい」と諭す。

「おとろえた年寄りや、貧しい人や、赤ん坊を抱いた人や、松葉杖をついたかたわの人や、重い荷物をせおって腰のまがった男や、喪章をつけた家族などに出会ったときは、いつでも、敬って道をゆずりなさい」(旺文社文庫)。

老年とか、不幸とか、病気とか、死とかは忌み嫌うものでなく尊敬の対象で、通りは絶好の学びの場だった。19世紀後半に統一国家となったイタリアでは国の将来を担う児童教育に力が注がれ、『ピノッキオ』や『クオーレ』が出版された。同書からそんな時代精神がうかがい知れる。

宮沢賢治の「雨ニモマケズ」(1931年)は、通りを越えて出掛けて行く。東に病気の子供あれば、西に疲れた母あれば、南に死にそうな人あれば、北に喧嘩(けんか)や訴訟があれば、行って看病し、稲の束を背負い、怖がらなくてもいいと話し、つまらないからやめろと言いに行くのである。

今年も「歳末たすけあい運動」が始まっている。いつの世も支え合う社会が望まれると師走の通りで思いを巡らす。

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