【上昇気流】(2023年12月7日)

梅毒の感染者が増え続けている。特に感染した妊婦から胎児にうつる「先天梅毒」の報告数が過去最多を更新したという。これは母体から胎盤を通じて胎児にうつるもので、障害を持って生まれる恐れがある(小紙11月29日付)。

今年は10月4日時点の報告数が32人で、これまでの最多である19年の23人を既に超えた。感染者全体数が増えたことによるものらしい。流行の原因としてSNSで出会った不特定多数との性行為などが指摘されている。性道徳が問われる報告だ。

疾病史から見ると、梅毒は西洋でルネサンスと共に出現した感染症だ。それ以前、中世の疾病はペストやハンセン病など集団的疾病だった。が、ルネサンスは個人の欲望が爆発した時代。

性行為という個人的行為による疾病として登場した。新世界からコロンブス一行が持ってきたと言われ、第1回航海の直後、1493年にスペインのバルセロナに出現する。

すると瞬く間にヨーロッパ全土に広がっていった。時代は人間解放のさなか。キリスト教の抑圧が取り払われ、性的自由の観念が広がり、売春が最盛期を迎えた。

立川昭二著『病気の社会史』(岩波書店)によると、1509年のヴェネチアの人口は30万人で、その30分の1に当たる1万1654人が売春婦。商人や船乗り相手に女性の多くが性を商品として自活し、富の土台を築いたという。だがヴェネチアはその後、ヴィヴァルディの音楽を残して歴史の舞台から消える。

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