先進7か国(G7)各国首脳の政権支持率は上位から、イタリアのメローニ首相44%、米国のバイデン大統領38%、カナダのトルドー首相30%、英国のスナク首相26%、フランスのマクロン大統領26%、ドイツのショルツ首相24%、日本の岸田文雄首相16%となっている(モーニング・コンサルト社、2023年11月)。
情報化時代では各国比較調査も瞬時に世界を駆け巡る。各国首脳とも苦戦するが、それでも日本の低支持率が際立つ。
日本の各社世論調査が一様に示す低い政権支持率を示すことで、岸田首相は、内政で国民の批判の目を気にしなければならない上、主権国民の支持を受けてこそ日本の国益を体現できる外交へも力が入りづらい状況に陥っている。
外交の相手国からは国民支持のない弱い首相と見透かされ、国家間の関係づくり、条件交換においても退陣後の将来へのリスクを感じさせてしまう。支持率の低い政権は外交上の不利益も実に大きいのだ。
米サンフランシスコで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に併せ、11月16日夕方(現地時間)に日米、日中でそれぞれ首脳会談を行ったが、外交成果は乏しかった。
日米はわずか15分の会談であった。もとより米民主党バイデン大統領追従ともいわれる岸田外交に、特段の交渉事項もなかったと言って過言ではない。
日中では中国による尖閣諸島周辺海域侵犯と排他的経済水域(EEZ)内のブイ設置、中国国内法人拘束、福島ALPS処理水の海洋放出批判、日本産食品輸入規制などの懸念を網羅的に表明したにすぎない。会談の会場も、中国首脳の滞在先に出向いてのことであった。
わが国は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」や、今年7月に2018年の発足以降初めて12か国目として英国の新規加盟の進捗をみた「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)」の主導国である。
日本の首脳外交では元来、常にこれらのアイデンティティーを背負った自負と存在感をもって、広範なアジア太平洋地域の平和と安全、また経済的繁栄を視野に、堂々と世界を渡り歩いてほしいものだ。
だが低迷する政権支持率から内政に汲々(きゅうきゅう)としていては、外交でそれができない。政権支持率は内政にとどまらず外交にも直結するゆえんだ。そして岸田首相が衆院解散権を実質的に失い、誰かが次期首相として自民党内で頭角を現すこともなく、野党も総じて精彩を欠く。日本政治はしばらく低空飛行が続きそうだ。
就任前の岸田首相を支え、岸田派事務総長代行を歴任した三ツ矢憲生・元衆院議員が発した最近のことばを借りれば、この状況は「国民の不幸」である。
「戦後レジームからの脱却」を掲げて日本国民を鼓舞し、わが国を卑屈な自虐精神から、誇りある愛国精神による国家へと覚醒、脱皮させようとした計8年8か月にわたる安倍政権が思い出される。 未来に向けたビジョンある日本の国づくり、そのモメンタムを失うべきでない。志ある次の政治リーダーは果たして誰か。(駿馬)