難題多い「誰でも通園」

小欄(6月27日付)でも書いたが、親の就労要件を問わない「こども誰でも通園」のモデル事業がスタートし、さまざまな課題が浮き彫りになってきた。

東京新聞がモデル事業実施自治体にアンケートした結果を11月8日付で報じている。それによると、4月開始の川崎市は0~5歳児574人が利用。東京都文京区は申し込みが殺到し、140人がキャンセル待ちという。一方、静岡県島田市は8月開始で利用者ゼロである。都市部と地方、各自治体間ではニーズや保育事情が、かなり違うようだ。

また現行の一時預かり事業と何が違うのか。すみ分けが不明瞭との声もある。

こども家庭庁によれば、一時預かり事業は家庭で保育が一時的に困難になった子供を預かり、必要な保護を行う「保護者の必要性」によるものだが、「誰でも通園」は子供を中心に考え、「全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備する」のが目的だと言う。

制度検討会の議論では、生後6カ月~2歳児を対象に上限月10時間の利用が想定されている。利用時間が短い乳児に対して、毎回担当保育士が変わるとなれば、果たして良質な保育を保証できるのだろうか。

保育現場から見れば、園に慣れるのに時間がかかる上に、週2回では在園児と同じ保育は難しい。現実的にはプラスの保育士が必要になってくる。

制度の意義は理解できたとしても、保育士不足の現状において、一時預かり事業の他に新たな制度を全自治体で実施するには難題が多過ぎる、というのが保育現場の本音であろう。

孤立育児による虐待リスクを減らすというのであれば、子育て世代包括支援センターなど既存の制度を充実させるやり方もある。子供中心と言うが、支持率アップを狙った拙速な施策に見えてしまう。

(光)

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