
11月20日はベトナムでは「教師の日」。官公庁や企業が休むということはないが、国民的祝日の一つになっている。
中部の中核都市ダナンで、その現場に出くわした。街中の小学校の門前に、バラの花の行商人が、路上にたくさんの花を置いていた。生徒が担任の先生にプレゼントするのだという。
ベトナムは歴史的に中国との関係が深く、文化的にもその影響を強く受けている。そのため、ベトナム人も基本的に教育熱心だし、勤勉でよく働く儒教的美徳を備えている。
それにしては教師の給料が安い。建築現場や道路工事の肉体労働者並みだ。
「教師の日」には生徒が感謝の意と共に贈るバラの花だけでなく、父兄からせっけんやシャンプーだとかの日用品もプレゼントされる。せっけんを山と積まれても教師は困るだろうから、都市部では現金も渡される。それも一律ということはなく、富裕層は50万ドン(約3000円)くらい出すという。
日本では公務員規定に触れる賄賂とされ、考えられないことだが、ベトナムでは長く続く風習として残っている。これも生活困難者への互助制度の一つで、ベトナム型地域共同体が発動していると見れば分かりやすい。
なおベトナムでは小学校の先生は、女性が多い。さらにベトナムでは年に2回、「女の日」を祝う。ただし「男の日」はない。ベトナムにあって日本にはない「教師の日」と「女の日」だけでも、面白い文化比較論が展開できそうだ。(T)