【上昇気流】(2023年11月23日)

パンタナル自然保護地域(Wikipediaより)

「飛行機から見ると平坦な土地を横切って数々の河が蛇行しているこの地域は、水の停滞した、弓形とうねりから成る景観を示している。河床(かしょう)そのものが、蒼(あお)ざめた曲線で縁取られているように見える」。

人類学者レヴィ=ストロースが『悲しき熱帯』(川田順造訳)で描いた、世界最大の沼沢地パンタナルの景観だ。マトグロソ州とマトグロソドスル州にあり、ボリビアやパラグアイにもまたがっている。

「地上に降りてみると、パンタナルは夢の風景になる。ゼブ牛の群れが、水に漂う方舟(はこぶね)の上に避難してでもいるように、沈んだ丘の頂に待避している。他方、水に没している沼の中には、群をなした大きな鳥たち―」。

この湿地は2000年にユネスコの世界遺産と生物圏保護区に指定されたが、人類学者が見た景観は今、急速に変わりつつある。19年と20年に旱魃(かんばつ)が襲い森林火災を引き起こした。

20年に発生した火災はパンタナル全域の3分の1に相当する3万9000平方㌔㍍を焼き尽くした。また1700万もの動物が死に、種の存続を脅かした。さらにこの11月、熱波で森林火災が拡大し、両州では非常事態宣言が発令された(小紙11月20日付)。

3000件以上の火災で、焼失した土地は85万㌶。熱波は気候変動によるものだが、森林の焼失はさらに地球環境を変えていく。世界の国々が争うのではなく、和解、一致しなければならないことを、この地球が切望しているのだ。

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