【上昇気流】(2023年11月21日)

ヒグマ

海岸で漁師たちが作業をしているところへ、大きなヒグマが近づいてきた。それに気付いた1人の漁師が「こら!来るな」と叱り付ける。するとヒグマは、すごすごとそこから離れて行った。

NHK「ヒグマを叱る男~完全版36年の記録~」で、このシーンを見た時は本当に驚いた。野生のヒグマを叱って追い払うのは、北海道・知床の奥地で半世紀以上、サケやマスを獲(と)ってきた大瀬初三郎さんという80歳を超す漁師だ。

大瀬さんによると、ヒグマは自分より強そうに見えるものには向かって行かない。そのため近づいてきたら大声で叱り、睨(にら)み付ければ静かに去って行く。自身も仲間の漁師もヒグマに襲われ、けがをしたことはない。

もちろん、こんなヒグマ撃退法を他の人に勧めることはできない。しかし、大瀬さんら漁師とヒグマの“共存”は、東北地方を中心に起きているクマによる人的被害を考える上で、示唆するものがある。

過去最多のクマ被害は、餌となるブナの実の不作が主な原因とされるが、一方で過疎化による耕作放棄地の増加も一因という。農作業をする人の姿が見えなくなった場所は、クマの行動範囲となる。クマと人が住む空間の境界が曖昧になっているというのだ。

クマの出没は東北の人たちにとって切実な問題だ。しかしクマにしてみれば、人間ほど恐ろしい生き物はいない。過疎化の中、人とクマとの境界をどう作っていけばいいか考える必要があるようだ。

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