きょうから11月。暦を繰ってみると、旧暦ではいまだ9月。神無月の10月は今月13日から始まる。全国の神様が島根県の出雲大社に旅立って不在となるので神無月。逆に神様が集まる出雲は神在月(かみありづき)と呼ぶ。
神様は目下、在地におわすので秋祭りが盛況だ。「ワッショイ、ソイヤ」の掛け声が聞こえてくると、わが国が八百万(やおよろず)の神の国と実感する。
人類の文明史5000年のうち4000年は古代で、そこには多くの神々がおられた。地中海周辺は神々のあふれる世界で、ローマ帝国では30万を数えた。それがやがてキリスト教やイスラム教の一神教が主流になる。
多くの神の中の単一神への個人崇拝が集団崇拝となり、さらに他の神々に対して排他的になるとき、いわゆる一神教が成立するという(本村凌二著『多神教と一神教』岩波新書)。
ローマ皇帝コンスタンティノス1世がキリスト教を公認した「ミラノ勅令」(313年)は、全ての宗教の完全なる信仰の自由を保障したが、380年にキリスト教が国教化されると異教や異端を排除する「魔女狩り」が始まり、神殿は破壊されるか教会に改造され、ユピテル(ゼウス)もアポロンもヴィーナスもその像はことごとく破壊された。
とはいえ、唯一神は恐れ多い。それで聖母マリアや聖人が次々と登場する。これは形を変えた多神教か。きょうはその全ての聖人を崇敬する万聖節(ばんせいせつ)である。八百万の神とどこか通じているように思えるのだが、どうだろう。