東海道新幹線が1964年に開業して以来続いてきた車内ワゴン販売がきょうで終了する。温かいコーヒーや固くて美味(おい)しいアイスクリームが車中で味わえなくなるのは残念だ。人気の2商品はグリーン席のみの販売となる。
出張帰りのワゴン販売を楽しみにしているビジネス客も多かっただろう。のぞみが停車する各駅にはコーヒーやアイスの自動販売機86台を新たに設置するというが、不満は残る。
例えば食事時に乗り込み、車内で弁当を使った時などは、食後に車内販売が回ってくるのを待って温かいコーヒーを飲むことができた。出発前に自販機でコーヒーを買っても、食事を終える頃には冷めてしまっているだろう。車内販売は随分便利なサービスだった。
パーサー(販売員)の仕事ぶりも、気持ちがいいものだった。コーヒー一つ販売するにしても、そのてきぱきした対応や手際にプロの仕事という感じがあった▼かつて四角いビニールの容器に注いだお茶や冷凍みかんが売られていた頃から、車内ワゴン販売は旅の楽しみの一つだった。駅構内の売店やコンビニで買って持ち込む乗客が増え、売り上げが減っていたこと、そして販売員の人手不足などが廃止の理由という。
在来線の特急ではかなり前に廃止され、利用客の多い新幹線でも、新型コロナウイルス蔓延(まんえん)で軒並み中止や廃止になり、数えるほどしか残っていない。なくなって、改めてそのありがたさと価値が分かるのである。