【上昇気流】(2023年10月27日)

野田山墓地(Wikipediaより)

金沢市の南郊に野田山という標高180㍍ほどの低山がある。その北側の緩やかな丘陵一帯に広がるのが野田山墓地。加賀藩祖の前田利家はじめ歴代藩主や家臣、そして明治以降の軍人や文化人、一般市民が葬られている。

中学の恩師の墓参りに初めて訪ねた。ところどころ赤松が美しい枝を伸ばし、日当たりもよい。頂上付近からは金沢市街を一望し、その向こうに日本海も見える。

墓地としては実に申し分のない立地と思えた。市営の墓地のほか寺や石材店が管理する民営の墓地もあり、どんどん広がっていったのもうなずける。広さは約43万平方㍍で東京ドームの約10倍、墓の数は数万基と言われる。

こんな所に墓を持てる人を羨ましいと思ったが、ただ「クマ出没注意」の看板には驚いた。管理事務所の人によると、つい2週間前にも近くで人がクマに襲われた。事務所にはクマ除(よ)けのための大きめの鈴を置き、墓参の人たちに貸し出している。

墓を案内してくれた石材店の人も、クマの足跡を見たという。最近2頭が駆除され、その縄張りに別の若いクマが出没するようになったなど、状況をよく知っているようだった。

無事に恩師の墓参を済ませ、折角だからと前田家の墓所もお参りすることにした。しかし頂上付近の墓所の周りは樹木が生い茂り、今にもクマが出そうな雰囲気であった。そこで鈴をひときわ高く鳴らした。それを聴いた戦国きっての猛将利家、「臆病者め」と憫笑(びんしょう)しただろう。

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