トップコラム【上昇気流】(2023年10月26日)

【上昇気流】(2023年10月26日)

芦屋公園の太宰治像

東京のJR三鷹駅南口には太宰治に関する二つの展示館がある。一つは三鷹市美術ギャラリー内の太宰治展示室であり、もう一つはそこから徒歩5分ほどの太宰治文学サロンである。

2年ぶりにこの文学サロンに来ると、展示室がリニューアルされていた。壁面は全集はじめ太宰の著作や研究書で埋め尽くされていた。そして反対側はコーヒーやクッキーなどの飲食ができるカフェに。

リニューアルオープンは昨年3月。これらの書籍類は、太宰の研究者、山内祥史さんと太宰の長女、津島園子さんの旧蔵書で、1000冊以上に上るそうだ。「以前、ここで開かれていた企画展示はどうなりましたか」。

ガイドさんに尋ねると「太宰治展示室に移りました」とのこと。そこで駅前にある展示室「三鷹の此の小さい家」に行ってみると「さよならだけが人生だ―太宰治、林芙美子へ、井伏鱒二の言葉」の展示があった。

太宰は単行本『ヴィヨンの妻』の装幀と扉絵を「放浪記」の作者、芙美子に依頼し、彼女の邸宅を訪ねていたという。また、短編「眉山」でも彼女を登場させた。その芙美子が慕っていたというのが太宰の師、井伏だ。

これら3者の交流ぶりを、葉書や、原稿や、色紙や、文芸雑誌などで展示していた。編集者の立場から見て興味を引かれたのは原稿の文字。太宰が書いた「グッド・バイ」や「人間失格」の字を見ると、メリハリがあり、読みやすく、見事なのだ。この文字に脱帽した。

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