【上昇気流】(2023年10月20日)

コメディアンで俳優の財津一郎さんが亡くなった。89歳だった。1966年、人気テレビ番組「てなもんや三度笠」にレギュラー出演し、甲高い声で「キビシーッ」「~してチョーダイ!」と叫ぶ独特のギャグで大ブレーク。一世を風靡(ふうび)した。

当時、小学6年生だった気流子にも、その登場は鮮烈で、とにかく面白かった。しかし、このギャグがなぜ人気を博したかを一言で語るのは意外と難しい。ただ奇矯だというのでは説明がつかない。

改めて考えてみると、財津さんのギャグは律儀でちょっと気障(きざ)なロマンチストというキャラクターが基本にあった。こういう人は、からかいの対象になりやすい一方で、憎めない愛すべき人物と言える。

財津さんのキャラクターが愛されたのは、当時の時代の雰囲気もあった。日本人の多くが未来に明るい夢を持っていた。70年代以降、暗い新左翼的な風潮が芸能やテレビ番組にも影を落とす以前のことである。

その後、財津さんはシリアスな役もこなす演技派の俳優になる。伊丹十三監督の「お葬式」で日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞し、ドラマやミュージカルでも活躍した。「てなもんや」で鍛えられた役者魂が、その他の作品や番組でも存在感のある演技を遺(のこ)した。

どこかにロマンチシズムを秘めた夢や憧れを失わない姿勢。中古ピアノ買い取り・販売会社のCMが20年以上も続いたのも、そんな財津さんのキャラクターと無縁ではないだろう。

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